人流分析で守りと攻めの観光復興へ ~藤沢市~
藤沢市経済部観光課課長
木村 嘉文氏
客観的なデータで観光の実像を把握
――KLAを導入した経緯を教えてください。
木村氏 2020年からのコロナ禍で藤沢市の観光も大きな打撃を受けました。人が多く集まるゴールデンウイークは人流が激減し、毎年秋の風物詩である「ふじさわ江の島花火大会」は2019年から3年連続で中止となりました。さらに、コロナ禍では人流に関する報道も多く、どこに真実があるのだろうという迷いも生まれました。本当にマイクロツーリズムの傾向が強まったのか? 緊急事態宣言中に東京からの来訪が多いと批判が出たが本当か? 高齢者の動きは本当に鈍化しているのか? こうした観光の人流トレンドを、新しく客観的なデータで状況を把握する必要があると考え、2020年10月に正式導入しました。
――KLAをどのように活用していますか。データ分析からわかったことはありますか。
木村氏 曜日や時間帯、年代別に来訪者の特性を調べています。どこから来ているかを示す「来訪者居住地分析」も活用します。KLAは、ジオフェンス(ツール上の特定の場所周辺に自分で境界線を設ける)で区切った場所をピンポイントで指定し、粒度の細かい精緻なデータを確認できるので、特定の観光地や観光施設の人流を分析しています。また、KLAはサブスクリプション(使い放題)の契約なので、ほかの観光地との比較も気軽にできるのも魅力です。
データ取得から分析まで自分で行いますが、KLAの画面は感覚的に作業ができるので、助かります。
データをみていて、わかってきたこともあります。例えば、コロナ禍で高齢者の来訪が減っていると考えていましたが、藤沢市を代表する観光地である江の島においては、実際には平日の午前中は高齢者が来訪していることがわかりました。また、東京からの来訪比率の傾向は以前とあまり変わらなかったことも明らかになり、昨年のゴールデンウイーク直後には、これらの明確なエビデンスを示してプレスリリースするなど、観光地のイメージを損なうことのないよう「守り」の局面で活用しました。今後は観光協会と協力して、こうした分析結果を観光政策にも生かしていきたいと考えています。
――今後の政策立案にも活用の幅が広がりそうですね。
木村氏 例えば、藤沢市は花火大会が一大イベントですが、花火大会は天候の影響も大きく受けるため、様々なリスクを抱えながら実施するイベントです。本当に花火大会に注力すべきか、もっとほかの風物詩として定着した「湘南の宝石」(11月から2月にかけて江の島で実施するイルミネーション)など長期間で実施するイベントの方が結果的には経済効果が高いのではないかなど、観光政策の今後の方向性を検討するうえでも、KLAでのデータの分析が「攻め」の局面で役に立ちそうです。
また、当初は観光課で利用を始めましたが、今では街づくりや都市計画の部署でも活用するようになりました。データに基づく政策立案を今後も推進していきたいと考えています。
観光分析向けオススメ機能
観光客の周遊先を分析
来街者がどこと、どこに立ち寄るか。これを把握できるのが、KLAの「3地点来訪者居住地分析」。任意の観光スポットを3つ選び、そのうちの2か所や、または3か所すべてを訪れた観光客の人数がわかる。観光客の動きを把握するのに便利な機能だ。例えばエリアAとエリアBを併用する人が多いことがわかると、エリアAとBのタイアップイベントや広告ポスターの設置などを検討するができる。さらにエリアだけでなく、より細かい施設ごとの併用者を割り出すことも可能だ。KLAなら簡単操作でデータを出せるので、より効果的な観光振興策をスピーディーに検討することができる。
3地点来訪者居住地分析
- ※2021年4月29日から5月5日に藤沢市および近郊である「江の島」「腰越」「片瀬西浜」の各エリアに来訪した人数と、2地点または3地点すべてを来訪した人数