2020/04/22(水)

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KDDI Location Analyzerを用いたGPS位置情報分析例(第4回) ~スーパーマーケットの集客戦略を読み解く~

はじめに

これまでに、KDDI Location Analyzerを用いたGPS分析手法についていくつか紹介してきました。今回のコラムでは小売業の分析事例として、位置情報ビッグデータを使って各店舗の集客範囲や、曜日別の来訪傾向を確認し、集客戦略を推測してみたいと思います。

【第1回:隅田川花火大会開催時のミクロな人の動きを可視化はこちら →
https://k-locationanalyzer.com/information/660/

【第2回:都市間移動などマクロな人口流動を可視化はこちら →
https://k-locationanalyzer.com/information/678/

【第3回:投資情報としてのGPS位置情報データはこちら →
https://k-locationanalyzer.com/information/680/

各店舗の集客範囲は?(3地点来訪者居住地分析)

まず、KDDI Location Analyzerの「来訪者居住地分析機能」を使用して、各店舗の集客範囲を確認できるという例をご紹介します。

来訪者居住地分析機能とは、任意の店舗や施設にジオフェンス(仮想境界線)を設定し、指定した期間や時間帯に来訪した人の居住地を、市区町村や町丁目単位で地図上に可視化するものです。この機能では同時に3地点まで分析することができ、各店舗の商圏範囲やカニバリ状況の分析が可能です。今回は例として、東京・城南地区のイオン3店舗の来訪者居住地を分析しました (図1)。

  • 集計期間:2019/11/18-2019/12/29(6週間)
  • 集計場所:イオン品川シーサイド店、イオン御嶽山駅前店、イオン碑文谷店
  • 集計条件:各日8:00:24:00の来訪者を居住地別に集計

図1:KDDI Location Analyzer・3地点来訪者居住地分析画面

この図では、イオン3店舗のうち訪問者数が最も多かった店舗の色で各町丁目を色塗りしています。赤は品川シーサイド店への来訪者が最も多かった地域、緑は御嶽山駅前店への来訪者が最も多かった地域、青は碑文谷店への来訪者が最も多かった地域です。
さらに、赤・緑・青の色の濃さで、来訪者の多い地域と少ない地域を示しています。

これを見ると、各店舗の集客戦略が見えてきます。「品川シーサイド店・碑文谷店」と「御嶽山駅前店」とで商圏範囲が異なるのです。前者が細長い商圏になっているのに比べ、後者は地元集客中心となっています。

  • 品川シーサイド店・・・第一京浜沿いから広く集客
  • 碑文谷店    ・・・目黒通り沿いから広く集客
  • 御嶽山駅前店  ・・・中原街道に近いにもかかわらず地元集客中心

それもそのはず、品川シーサイド店や碑文谷店には大駐車場がありますが、御嶽山駅前店は商店街内に立地していることもあり提携コインパーキングしか用意されていません。前者は車でのアクセスも視野に入れて集客、後者は地元密着型といえるかもしれません。
ただし、御嶽山駅前店は東急池上線・御嶽山駅の駅前に立地しており、電車でのアクセスは抜群です。地元に加え、御嶽山より郊外側の池上線沿線に商圏を広げていることも見て取れます。

従来型の商圏分析では、各店舗の集客範囲を理論的に推計するためにハフモデル分析を利用することが一般的でした。ハフモデル分析では店舗からの距離や距離抵抗、魅力値といった要素を使って各店舗への想定集客数の理論値を分析することになります。一方でGPS分析を使うと、このように立地や分断要素などの実情、集客戦略も反映した実商圏範囲の確認ができ、ハフモデル分析の検算・検証が可能になります。
理論値と実集客を比べた分析、つまり両者は車の両輪というわけです。

では次の章で、曜日別の推移などさらに詳しく見ていきましょう。

各店舗は何曜日にどんな人を集めている?(単点分析ダッシュボード)

各店舗の来訪者をさらに細かく分析するには、「単点分析ダッシュボード」機能を使います。 この機能では、曜日別の来訪者数や来訪傾向を確認することができます(図2)。

図2: イオン各店舗の曜日別来訪者数・来訪者層(左から、品川シーサイド店、御嶽山駅前店、碑文谷店)

どの店舗も、平日では火曜日が最も来訪者数が多くなっています。イオンが展開する曜日別特売「火曜市」の効果であることは間違いないでしょう。
さらに曜日別に読み解いていくと、御嶽山駅前店と碑文谷店は土日型(特に土曜日型)である一方で、品川シーサイド店は平日型です。この理由は、一番下の「居住者・勤務者・来街者 」別のグラフ(図2)を見るとよく分かります。品川シーサイド店では、平日はオレンジ色「勤務者」の割合が4割近くに達する日もある一方、御嶽山駅前店では青色「居住者」が過半数、碑文谷店では「居住者」と緑色「来街者」の比率が半々程度となっています。品川シーサイド店はオフィス街に立地しており、他に比べて周辺勤務者の利用が多いというわけです。

では「勤務者」はいつ品川シーサイド店を利用しているのでしょうか。 曜日別かつ時間帯別と細かく見てみると、面白いことが分かりました。イオン品川シーサイド店では、火曜日だけ、時間帯別の利用傾向が他と異なるのです(図3)。

図3: イオン品川シーサイド店の曜日別・時間帯別来訪傾向

火曜日以外は、夕方にピークが見受けられませんが、火曜日だけは夕方に明らかなピークがあります。そして「勤務者」が火曜日だけ夕方も減っていないのです。つまり、火曜市の開催日は仕事帰りにイオンで買い物をして帰宅する人が多いということでしょう。例えば総菜や単身者向けの個装パックなど、会社帰りの客層を意識した品ぞろえをしているかもしれません。
ところでスーパーマーケットの中には、「EDLP (Every Day Low Price)」を標榜して曜日別のセールを行わない会社も存在します。代表的なのが西友やオーケーストアです。このような店舗では確かに曜日別の波が小さくなっています(図4)。このように、店舗ごとの特徴が机上調査ではっきり見て取れます。

図4: 西友大森店とオーケー・サガン店の曜日別来訪傾向

※1 KDDI Location Analyzerでは、GPS位置情報データの提供者ごとに、推定居住地(直近数ヶ月の夜間に最も長時間滞在した場所)や推定勤務地(直近数ヶ月の昼間に最も長時間滞在した場所)という情報を付与しています。ここでは、各店舗半径1km圏内に推定居住地のある人を「居住者」、推定居住地のある人を「勤務者」、いずれもない人を「来街者」と定義しています。

おわりに

KDDI Location Analyzerは特に小売業の分析で大きな効果を発揮します。自社動向と近隣他社動向を同じ軸で比較することができ、自社が引き込めている層、もっと引き込めるであろう層を様々な視点から検討することができます。
公的統計中心の従来型の商圏分析ではここまで精緻なデータを取ることができませんでした。机上調査でこのような来訪傾向をとらえることができるというのがKDDI Location Analyzerの強みといえます。


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