2021/10/25(月)

京都清水寺周辺の人流・周遊行動を、位置情報データでひも解く

新型コロナウイルスのワクチン普及や感染者の全国的な減少を受け、アフターコロナを見据えた観光地づくりの需要が高まっています。
今回のコラムでは、そうした観光地の対策・施策に役立つ観光スポットの人流傾向や周遊状況などをKDDI Location Analyzerを用いてどのように可視化できるのかをご紹介します。

昨年のGoToトラベル期から直近まで、人出のボリュームはどう変わった?

観光地の人気ランキングで上位に入ることが多い清水寺を題材に、来訪者数の推移を時系列でみてみます。

昨年GoToトラベル事業を実施していた期間は、緑の網掛けで示した部分です。

GoToトラベル事業は、
・2021年7月下旬より東京都以外のエリアでスタート
・2021年10月より東京都を含む形で再スタート
・2021年11月下旬に新型コロナウイルス感染拡大を受けて一部見直しが図られ
・2021年12月28日より一旦停止をした経緯があります。

世の中の経緯と照らし合わせると、2020年11月のシルバーウィークあたりで一気に来訪者が増え、感染拡大期間は来訪者が減少するものの、年末年始(特に元旦)には人出の波が上がっていることが見て取れます。
その後は、自粛期間の揺り戻しなのか、第2期の緊急事態宣言が解除される2021年3月下旬からしばらくは人出が増加、またオリンピック開幕時の7月4連休で少し人出が増加しています。

このように、時系列で来訪者の増減をデータで把握することで、“どんな時に人流が増減する”といった予測を立てる一つの指標にできますし、“イベント等を実施した際にどのくらい集客できたか”といった効果測定もできます。

清水寺に来る人はどんな人で、いつ来ている?

KDDI Location Analyzerは、指定したスポットの来訪者の性、年代、時間帯、曜日別の来訪者数や、来訪者の推定居住地などが分析できます。

下の図のように、指定した期間の来訪者について、期間内の来訪者数推移や、性別、年代別、来街者/居住者/勤務者別(今回は、観光地分析なので来街者に絞っています)といった属性で、曜日別に傾向を分析できます。

2021年7月‐9月の清水寺来訪者データ(単点分析ダッシュボードより)

曜日別や年代別の来訪者傾向は、観光イベントの企画等にお役立ていただけます。
ちなみに、コロナ禍前の2019年7月~9月で同じデータを見てみました。
さほど大きな差ではありませんが、コロナ禍前と比べてコロナ禍の来訪は平日を中心に女性比が減り、男女がほぼ同比率になっている点と、月~木曜の来訪が少し減り、週末に人出が寄る傾向が見られます。また、シニア層(70代以上)の来訪の減少は顕著に見て取れます。

このように、コロナ禍による来訪傾向の差なども分析できます。
また、来訪者がどこから来ているかを都道府県単位で把握できる機能もありますので、また別の回でご紹介いたします。
観光分析に役立つ機能を拡充

今は、まだ完全にコロナ禍が収束しているわけではないため、今後ワクチンの接種率の上昇具合や、感染者減少などを受け、来訪者の傾向はさらに変わっていくことが予測されますが、こまめに来訪者のデータを把握することで、将来の予測などに役立てていただけるかと思います。

(分析条件)
・上記全期間における10時~20時の間、15分以上滞在

周辺の観光スポットとの周遊状況は?

では、次に清水寺付近にある他の観光スポットとの周遊率を見てみましょう。
KDDI Location Analyzerでは、調べたいスポット(ここでは仮に「円山公園」と「霊園山歴史館」を設定)を3つ設定でき、それぞれのスポットに来訪した人の併用率などが把握できます。

このデータからは、清水寺と円山公園はそれぞれ来訪が多く、同日で併用する人も多いことが見て取れます。

(分析条件)
・2021年7月~9月 10時~20時、全施設15分以上滞在

このエリアは、どこが混みやすい?

KDDI Location Analyzerでは、主要道路を通行する人のボリュームを見ることも可能です。赤い道は通行人口が多く、黄色が普通、緑が少ないことを示しており、どの道路が混みあうかといった把握も可能です。
円山公園から清水寺までは赤い線でつながっており、この2地点を周遊していることがここからも見て取れます。

おわりに

このように、任意の観光スポットやエリアの来訪者の数や属性の傾向や、道路の通行人口をこまかく把握していくことにより、

  • データに基づく来訪者層に沿ったイベントやキャンペーンの検討
  • 主要観光スポットの周遊ルートの改善
  • 混雑状況の予測による感染症対策強化など

アフターコロナを見据えた観光施策の企画運用に多くの知見を得ることができます。