• KLA 国内居住者版

時代や環境の変化をいち早く察知し、 市場全体を捉えた、 リアルな顧客像を知るために。

  • 株式会社大丸松坂屋百貨店 大丸東京店
    営業推進部 店づくり戦略担当 髙瀬誠司様

    全国主要都市に15店舗の百貨店を運営されている株式会社大丸松坂屋百貨店様。より確度の高い市場の分析や、販促・集客策の最適化、それを実現するためのターゲット像の具体化に向け、商圏分析や人流分析のできるGIS(地図情報システム)「KDDI Location Analyzer」と「MarketAnalyzer™5」※1 をご導入されました。その経緯や活用について、大丸東京店で店づくり戦略をご担当の髙瀬誠司様にお話しを伺いました。

    ※1 公的統計や自社データ、人流データ等、様々なデータを投入し、店舗や施設の分析やエリアマーケティングを可能にする商圏分析GIS(地図情報システム)。KDDI Location Analyzerと連携でき、より広域な人流分析や精緻なエリア分析を可能にします。

  • 会社

    株式会社大丸松坂屋百貨店

  • 業種

    小売・飲食・サービス

  • 関連サービス

    • KLA 国内居住者版

  • 課題

    • 様々な層の人が数多く行き交う東京駅という特性上、一歩踏み込んだターゲットの動きが掴みにくい。
    • 自店を中心とした周辺エリアをはじめ、一般のお客様の動きが定量的に分析できない。
  • 成果

    • 店舗周辺の人の動きや優先すべきターゲットが、どこにどれだけいるか定量的なデータで把握できるようになった。
    • 自社顧客だけでなく、全体から見た顧客像の分析ができるようになった。

髙瀬様のお仕事内容について

大丸松坂屋百貨店はJフロントリテイリンググループ会社の一員ですが、同じ事業の中にパルコやGINZA SIXがあります。私は、約70年の歴史のある大丸東京店で、主に店づくり戦略を担当しています。具体的には今後の百貨店像、未来に向けて今後の百貨店の可能性を、新たなビジネスも含めて探していくといった内容です。例えば、新ブランドや取引先の開拓、従来の慣習にとらわれない異業種との情報交換、情報収集等を進めています。

大規模開発やコロナ禍の影響など、 目まぐるしく変化する東京駅エリア。 そのポテンシャルを、データで正しく把握したい。

商圏分析GISに着目するようになったきっかけは?

3つあります。1つ目は、店舗の立地です。
東京駅は非常に多くの人が集い、利用する世界屈指のセントラルステーションです。そこに隣接する百貨店として、数多くのお客様がご来店していますが、そのお客様の具体像が掴みきれないという課題がありました。

勤務者、来街者、旅行者、出張者等という大まかな軸でターゲット設定をするものの、その先の動きは、なかなか把握できません。自社のCRMから会員情報を見ても、購買履歴や会員の動きからある程度の自店を利用するお客様をイメージすることはできますが、東京駅の乗降客数は1日約100万人もいるため、周辺エリアの来訪者全体からみるとごく僅かしか把握できていないことになります。全体像から、より周辺マーケットを深掘りしなければという思いが長年あり、その手法を模索していました。

2つ目は、東京駅の周辺開発。
丸の内・大手町・八重洲エリアで2028年まで大規模な再開発が進んでいます。これだけ大きな開発だと、明らかに人流が変わるのが目に見えてわかります。その変化を過去から現在まで捉え、今後を予測する必要性を感じていました。

3つ目は、コロナ禍による変化です。
これは全店規模で、本当に大きな影響を受けました。北は北海道から南は福岡まで、全国主要都市で15店舗展開していますが、特に、東京、梅田等のターミナル駅にあるお店は影響が大きく、回復も遅い傾向にあったため、コロナ禍前から今の人流の変化をみつつ、今後のマーケットの変化や規模を掴みたいと思いました。
リモートワークの影響やライフスタイル・価値観の変化から、今までの「駅利用者」や「ビジネス利用者」などの概念では、通用しなくなっていると感じていましたし、今後はより確度の高い情報を持っていないと市場の動き(顧客購買行動の変化対応)に出遅れてしまうという危機感を抱いていたことも、GIS導入の大きな理由です。

そのような中で、展示会やセミナー等で情報収集をしていたところ、公的統計データや人流データを可視化できるシステムがあることを知りました。

過去、現在の把握から、未来の予測まで、 確度の高いマーケティング分析をするために 自社データ、公的統計や人流データは欠かせない。

提案されたソリューションで最も魅力に感じたのは、扱っているデータのラインナップが幅広いことです。
データが豊富ということは、様々な角度から分析できるということです。国勢調査等の公的統計データに人流データや自社の匿名化した顧客データを組み合わせて、現状の把握から今後の予測まで、より確度の高いマーケティング分析ができ、かつそのターゲットを今まで以上に明確にできると感じました。これが採用の一番の理由です。

お客様の購買動機は、時代と共に変化しています。 単純な“商品価値”から、ものを通じての価値、体験、ストーリーといった“情報の価値”へ、さらに今では、必要でかつ素晴らしいもの、単にブランドバリューだからといったことだけではなく、より納得のいく“自分らしさのための購買意識”が高まっていると感じます。
また、ここ10年で定着したネット通販の影響も大きいですが、百貨店で買うことの意味、ネット通販にはないリアル店舗ならではの購買体験、販売員(人)を通じたリアルな共感、モノを買うこと自体が特別な体験となるのではないか思います。そのような時代の変化に対応し商品やサービスを提供していくことが大事になります。

そこで、よりお客様に利用していただける店舗づくりを進めるためには、商圏の中で、どこに、どんな嗜好のお客様がいるのかを掴み、MDや店舗環境、販売員サービス等のあり方を深掘りしていく必要があります。今後はそうした分析ができる環境が無いと厳しいと感じ、このシステムに辿り着きました。

どんな業務に活用されますか?

現在の市場マーケティングと、有効なマーケットへのアプローチに活用していきます。

市場マーケティングは、過去から現在の変化を捉え、未来にむけての変化予測です。
具体的には、会員情報や公的統計データを参考にしつつ、周辺エリアに来る人、滞在する人を分析します。システム導入前は自分たちで公的データを収集、分析など、多くの時間を要していました。

[東京駅利用者と店舗来訪者の居住地から分析した顧客獲得率のイメージ]

このような現状の中、今回2つのシステムを導入することにより、多くの点で効率改善ができるようになりました。
1つは、KDDI Location Analyzerで、お店への来訪者のボリュームや属性を、指定した期間、時間帯で把握できるため、今まで以上に販促の効果測定にも活用していきます。これまでは会員以外の一般のお客様の動きは、長年の経験値から判断することも多いですが、一度この機会に、経験値を一回フラットにしてデータで人の動きを見ることは、販促効果の検証はもとより、その後の仮説から取組む方向性などを導き出すことにも大いに役立つと考えています。

もう1つは、MarketAnalyzer™5。このシステムは、欲しいデータのアウトプットがストレスなくすぐに出せ、より深い分析もできるため、劇的に効率が良くなりました。デモで見たとき、「PC操作だけで、こんなことまで、できるのか」と驚いたほどです。全体像を可視化するためのグラフも、自分で作ると縦横比が合わなくて作り直したりして結構なストレスです。見たいデータが、表やグラフも付いたレポートとしてすぐに出てくるだけでも従来と比べると雲泥の差ですね。今はこうした作業に費やす手間から解放され、分析や検証に十分な時間をかけられるようになりました。

今後は、有効マーケットにアプローチするために、どのエリアに、どれだけ自社のお客様がいるのかの動向を地図上に可視化していきます。可視化することで、具体的なイメージが共有でき、そのスピードも上がっていくと確信しています。これらのマーケティング情報をもとにターゲットに対しての効果的なアプローチや戦略の組み立て、コストパフォーマンスを意識した販促のエリア・手法の最適化に活用したいと思います。

さらに、この2つシステムの掛けあわせ、組合せにより自店のお客様がどのようなライフスタイルや価値観を持っているのかを明確にする顧客分析にも活用していきます。具体的にイメージできる顧客像を明確にすることは、自店のマーケティング情報として、ブランドリーシングや新規取引先の開拓時にも非常に大きな役割となります。まだ試行錯誤している最中ですが、両システムと顧客像の具体化に活用できるエリアセグメンテーションデータ「c-japan®」を使った仮想ペルソナ分析でターゲット像をより鮮明にしていきたいと思います。

[顧客像を具体化するc-japan®のセグメント一覧]

お店周辺に、どんな人が、どこに、どれだけいるのか。 実際に、どれだけ顧客を獲得できているのか。 地図上に可視化し、打つべき手を検討する。

私たちのミッションの1つとして「顧客の固定化」があります。これは小売の基本でもあると思います。言い換えると、どれだけ多くのお客様から利用していただく(愛される)店になるかと言うことです。
これからも、より多くご利用いただけるお客様をいかに増やしていくかが、私たちのビジネスの重要なポイントです。そのためにも、各種統計データに裏付けされた根拠あるお客様のペルソナ顧客像や来訪されるお客様のボリュームなど、その動きを具体的に知ることはとても重要です。

今後、店舗の顧客データをマッピングしてリアルな集客エリアを可視化したり、公的統計データから店舗周辺のビジネスパーソンのボリュームを見たり、顧客分布と公的データを重ね合わせて、顧客獲得率が高い、低い等を見たり。両システムを駆使して様々な角度からマーケットの分析をしていく予定です。分析結果は参考データとして共有していきます。地図上に可視化されることによって、情報の共有が今まで以上に図られ、マーケットに対する目線のブレを少なくすることができるのではないかと思います。
例えば、コロナ禍前の2018年、19年時点の来店者の居住エリアと直近のエリアでの変化が地図上で可視化され、色の濃淡でパッと見てすぐわかったりします。

[2018年と2022年の店舗来訪者居住地比較イメージ]

市場の変化を直感的に把握でき 部署を超えて、納得感や共感を生む データビジュアライズの重要性。

今まで、現場で感覚的に蓄積されてきた経験値から、実績動向など数値分析などよる判断は、ある程度できます。しかし、数値の解釈や理解では、やはり経験値といったものが大きく影響していることも事実です。
今回のシステムでマーケティングデータを地図上にプロットできることにより、数値だけの情報から、可視化された情報を加えることで、より全体像を捉えたマーケティングができるのはないかと思います。マップ上に各種データがプロットされた可視化情報では、会議に出席している若手が、地図を見て変化にいち早く気づいたりしています。
経験値がなくても直感的に変化に気づけるというのは、ひとつ大きなメリットと思います。また、ベテランであっても、担当業務や扱っている商材によって数字の見方は若干ブレるため、それぞれデータの解釈が異なったりします。マップやグラフで表現されたデータは、ある種共通言語のようになり、情報共有をする上で有効と思います。目線を合わせて情報を共有すると、そこから得られる共感も大きいですね。

マーケティングは生き物のようなところがあり、様々な要因により日々変化します。マーケットのちょっとしたことでも数字が跳ね上がったりする世界です。納得感というか、共感を生むアウトプットとしても非常に良いと実感しています。

導入から3か月。 データをどう見るのかの目線を決め、 その裏にある情報を読み取れるよう奮闘中。

商圏や人流のレポートを瞬時に取れるようになると、ついそこに私たちが求める全ての答えあると思いがちになります。
今回、このシステムを操作しながら気づいたことは、データはひとつのきっかけに過ぎないということ。大事なのは、それらのデータをどういった目線で捉え、考えるのかということです。ごく当たり前のように思いますが、ここは大きな違いを生む要素です。このことに気づけたことは私自身大きなポイントでした。
様々なデータが出てくる中で、自分たちのビジネスにあったものを選び、どのように組み立ててゆくのか、多少なりと掴めてきましたが、日々、このシステムと格闘している状態というのが、正直なところです。

1つの事例で申し上げるとKDDI Location Analyzerで人流データを抽出する際に、「滞在時間」の設定があります。0分か15分か30分か、この滞在時間の設定によってアウトプットが大きく変わります。特に東京駅は、全国から数多くの人が集まり、利用する場所で、人流が読みにくいエリアです。滞在時間が0分の時、15分の時と人流変化を見ながら仮説を立てないと、データの裏に何が隠れているのか、私たちが見るべき動きはどこなのか、を見ていくことが非常に重要になってきます。

ただ単にお店に来た人の人流データを見ただけでは、「まあ、感覚値とあっているね。」で終わってしまいます。人流の規模感や滞在時間を変えることによってどう変わるのか、その変化をどうとらえるのか。このシステムを使っていく中で、滞在時間の仮説の捉え方が形づけられてきていうように思います。

活用すべきデータの見極めと、 仮説条件をどの目線でとるかの判断軸。 この2つが大事。

これから導入を検討される方に、何かアドバイスはありますか?

このシステムで抽出した様々なデータから何を読み取っていくのか?自分たちに必要な情報は何なのか?を定性・定量を軸に予め考えておく必要があると思います。その上で、目標や課題に対して検討した仮説を組み立てること。この仮説無しでは社内で共有しても、単なる情報データとにらめっこして終わります。
仮説がないとデータから導き出されるポイントに自信が持てず、単なる“可能性の話”で終わってしまい、肝心な「どんな手を打つべきか」という施策の話まで、たどり着けません。組織としてその情報をどう使うのかを定めていないと、なかなか次につながらないと思います。
私自身、だんだんと仮説検証の感覚が掴めてきましたが、まだまだ入口に立っている状態と思います。

今後の展開について

今は大丸東京店でテスト的に活用していますが、今後は活用の幅を全社に広げていければと思っています。
全店15店舗のエリアの特徴やマーケットのポテンシャルを浮き彫りにしていくことで、全店における東京店の特徴、位置づけなどを測り店舗比較や評価等を通じ、今の東京店の課題に対し、今後につながっていく可能性があるのではないかと思います。

引続きトライアンドエラーを繰り返しながら、効果的なマーケティング情報を共有できるよう頑張ります。

(取材日2023年1月)

  • 会社

    株式会社大丸松坂屋百貨店

  • 業種

    小売・飲食・サービス

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