地下鉄海岸線沿線で過去最大級の大型イベントが開催、経験則だけでは測りきれない多様な情報の取得にKLAを活用
背景
● 2024年、神戸市営地下鉄海岸線の沿線にあるノエビアスタジアム神戸で人気グループの大型ライブイベントが開催された
● このイベントは2日間で延べ12万人以上の動員となり、サッカーJ1の1試合平均観客数(約2万人)を大きく超え、スタジアムでの過去最大級のイベントとなった
● 今後、同様の大規模イベント開催時に、より安全にお客さまを地下鉄で輸送するために、当イベント中の人流を多角的に分析し、課題を抽出することとした
分析にKLAを活用した理由について
奥島様:
地下鉄海岸線沿線での過去最大規模となるイベントにおいて、実際にどのような人流が発生していたのか、従来の経験則だけでは対応に限界があると感じました。 
KLAであれば、スタジアム周辺の時間帯別の人流密度や滞留状況、さらにはほかの交通機関への流出パターンまで可視化できます。 
これらのデータから、なぜ地下鉄海岸線が選ばれなかったのか、どうすれば選んでいただけるのかという本質的な課題を発見し、データドリブンな改善策を導き出せると考えました。 
スタジアム来訪者の人流を多角的に分析し、イベント開催時の公共交通機関に関する課題を抽出
分析概要
■スタジアム来訪者の人流分析の観点
・ 居住地
・ スタジアムまでのアクセス手段
・ 時間帯別の来訪者属性(性別・年代別)
・ スタジアム周辺の歩行者動線
・ スタジアム周辺の道路別主要動線(歩行者通行量)
・ 神戸市内および近隣観光地の宿泊者数
■分析結果
・ 来訪者の約半数は関西圏(大阪、兵庫、京都)からの来訪だが、東京、福岡、愛知など遠方の人も多く、全国各地からの来訪があった
・ 遠方からの来訪者は、新神戸駅経由の新幹線利用者が最も多く、神戸空港などの周辺空港利用者は限定的であった
・女性の来訪者が約7割を占め、特に20代の方が多かった
・スタジアム周辺には、グッズ販売開始時間(午前11時:ライブ開始7時間以上前)から一定数の来訪者が集まり始め、ライブ終了後に一気に人出が減少した
・ グッズ販売開始からライブ終了まで、スタジアム周辺と近隣の地下鉄駅までの人の流れを時間帯ごとに分析。滞在目的別(グッズ購入、入場、チケットがないファンによる「音漏れ参戦」、帰宅)の動線変化や人流のピークも可視化できた
・ ライブ終了後の帰宅手段として、近隣の地下鉄駅ではなく徒歩で約30分かかる他社路線の駅まで向かう人が多かった
・ 来訪者の宿泊地はスタジアムの東方面(三宮、元町、神戸エリア)が中心だが、有馬温泉に宿泊する人も多く、観光とイベントを兼ねた滞在パターンが見て取れた
 
                         
                        分析結果から見えた課題
1.帰宅ラッシュ時における地下鉄海岸線利用需要の取り逃がし
ライブ開始前は地下鉄海岸線の利用時間帯が分散するが、ライブ終了後は一斉に帰路につくため、対応可能な最大数の臨時ダイヤを運行するも、多くの方に乗車待ちをさせてしまった。乗車待ちによる混雑の影響で駅への入場が困難となり、徒歩で離れた他社路線の駅へ向かう利用者が多数発生、地下鉄海岸線の利用需要を十分に取り込むことができなかった。
2.利用拡大・混雑緩和に向けた今後の改善策
KLAによる分析とともに地下鉄改札機の通過データを解析した結果、地下鉄利用者の約8割がスタジアムから東方面の三宮駅行きルートを利用していたことが判明した。市内中心地・交通拠点の三宮駅までは、地下鉄西神・山手線への乗り換え含む逆の西方面のルートでも所要時間に大差がないため、混雑緩和の観点から、西方面ルートの利用をより積極的に広報することで今後のスムーズな乗車・輸送力強化につながるとの気づきが得られた。
 
                        今回のKLA活用による成果と今後について
奥島様:
最大の成果は、駅混雑により多くの方が他社路線へ流出していた「機会損失」を定量的に把握できたことです。KLAによる人流分析と改札通過データを組み合わせることで、混雑の実態と改善の方向性が明確になりました。 
今回得られた知見を基に、大規模イベント時の事前シミュレーションや効果的な案内方法の検討など、具体的な施策を展開していきます。さらに、平常時においても沿線の商業施設などへの人の流れを分析し、新たな需要の掘り起こしや路線の魅力向上策の立案に活用したいと考えています。 
▶本事例をご紹介したセミナー情報(開催済み)
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