新たなまちづくりに向けた真庭市の「調査研究事業」に活用
導入前の課題と経緯について
岡野様:
2023年11月に真庭市からの委託事業として、市内の人流分析、新たな商業施設の開設前後の人流分析を行い、企業の進出や関係人口の創出を目的とした、新たなまちづくりに向けた「調査研究事業」案件を弊社が受注しました。それ以前から、真庭市とはさまざまな提案を行うなかで連携事業なども推進していたのですが、今回の案件ではビッグデータを活用して人流の分析を行い、次の政策に生かすことが目的でした。そのデータ分析にKLAを採用したのですが、真庭市がKLAの知見を以前から持っていたことが、きっかけとなりました。
田島様:
実はKDDIの営業の方を通じてKLAの存在を知り、非常に興味深かったことから、年に一回、真庭市の蒜山高原で開催されるイベント「海の市・山の市」の人流分析にトライアルで利用させていただいたことがあります。その際、来場者数や属性など、イベントに出店される事業者様にとって今後のマーケティングに役立つような情報が取れました。ただ、市役所では、そのデータを分析して次に生かすことが難しいのが現実です。
そこで、新たな施策につなげるための分析と提案を期待して、データの取り扱いに長けている株式会社 まちと学びのイノベーション研究所様に依頼することになりました。

採用の決め手について
岡野様:
費用面に関して十分予算内に収まるものでした。また、契約期間内であれば利用できるバックデータも多いので、当初想定していた調査目的以外の観光客の人流データ分析にも活用させていただきました。
田島様:
実際、私もKLAを使用したことがありますが、他社のツールと比較して非常に使いやすいです。ユーザーフレンドリーな点もKLAの魅力だと感じています。
新設された中心街の商業施設周辺の人流分析から、2大観光地の誘客施策に活用
具体的な活用方法を教えてください
岡野様:
実際の調査期間は、2024年2月1日から末日にかけての1ヶ月間でした。先ほど申し上げたように中心市街地に建設された商業施設の開設前後の人流データを収集し、どのような変化があったのかを分析しました。
また、現在ではホテルの建設も進んでいるのですが、各事業者の方が真庭市内に出店するにあたっては、何かしらのデータに基づいていると思います。ただ、そのデータは企業秘密的なところもあり、教えていただけるわけではありません。そこは仮説を立て、KLAのデータと照らし合わせながら仮説の検証していく作業を行いました。
さらには、KLAは今後の都市開発にも役立ちます。例えば、道路の混雑状況を把握することでは道路の拡幅工事の必要性を判断することができます。
事前に仮説として立てていたことが、KLAの分析によって違っていた点はありましたでしょうか?
岡野様:
違っていたということではないのですが、経験や肌感覚として感じていたことが、データとしてエビデンスが得られたものはありました。真庭市には湯原温泉と蒜山高原という観光地があるのですが、「蒜山高原から湯原温泉に行く観光客はほとんどいない」けれど「湯原温泉に行った人のほとんどが蒜山高原にも行っている」という認識は、かつてから地元の旅館組合や関係者の間にありました。ただ、それを証明する具体的なデータがありませんでした。
ところが今回、KLAを用いた調査によって数値としてエビデンスが取れました。
田島様:
これまで行政としてはビッグデータを活用した調査などは行わず、感覚的なもので観光施策を実施していたのですが、数値として明らかになったことで、そのデータを題材に議論することができるようになりました。
株式会社 まちと学びのイノベーション研究所様には、人流データの分析だけではなく、KLAから得られたデータをベースに、地域の方々と、今後のまちづくりに生かすための評価会を開催していただいています。その際、KLAのデータを提示しますと、すごくわかりやすいこともあって、皆さんに納得いただけます。

岡野様:
エビデンスのあるデータとして明確な数値が出たことによって、よりわかりやすくなり、私としても説明がしやすかったです。これまでは年間200万人が訪れる蒜山高原のお客さんに向けて誘客の宣伝をしていたわけですが、それではあまり成果が上がらない。なぜならセグメントが違うわけですから。それは湯原温泉の方々は肌感覚でわかってはいたものの数字で示すことができなかったです。一方、真庭市の観光の入口は湯原温泉に置くという戦略が固まりつつありましたが、その施策は変更する必要があるかもしれません。
また、真庭市ではスマートフォンを使ったデジタル地域通貨「まにこいん」という施策を進めているのですが、この「まにこいん」を掛け合わせることで、どこにいるマーケットに、どういうインセンティブを提供して誘客につなげるか。それが戦略して固まっていくストーリーが出来ました。
田島様:
今回の調査は、行政のEBPM(証拠に基づく政策)として有用性があることが大前提でした。ただ、われわれはEBPMを立案したくても、そのノウハウがないので、そこを岡野さんの会社にお任せできたことは大きなメリットだと感じています。また、データ分析を地域のまちづくりに根付かせると言いますか、データを見ながら科学的に新しいまちづくりを行なっていく機運を作り出す、その先鞭をつける意味でKLAを活用して良かったなと実感しています。

【今後の活用について】
岡野様:
真庭市では、さまざまな地域振興策が動いていますので、プロジェクトベースとなりますが、今後もKLAを活用する機会が出てくるのではないかと感じています。また、KLAと同じくKDDIさんのサービスですが、AIを活用する「GEOTRA(ジオトラ)」にも興味がありますね。
田島様:
まちづくりをするうえで、動線などを科学的に分析するツールとしてKLAを活用するのは、もう当然のこととして認識しています。ただ、KLAは事実としてデータを収集するだけなので、例えば、分析結果を元に最適な建物を作るとしたら、どんなものが良いのか。そんな提案をしてくれるような、もう一歩進んだソリューションが欲しいなと思っています。それが「GEOTRA」なのか、まだ使用したことがないので何とも言えませんが、その点も、株式会社 まちと学びのイノベーション研究所様と協議しながら、新しいまちづくりに取り組んでいければと考えています。